
クーガーの欠場報告で幕を開けた大阪プロレス6.21デルフィンアリーナ大会。
強豪タッグチームの一角であるムチャルチャが消えたことで大阪タッグフェスティバルは混沌と化してしまった。
なぜなら二回戦不戦勝が決まったことで、結成したての小峠&タダスケ組と、年に数度しか見られないスペシャルタッグであるミラクルマン&くいしんぼう組のいずれかが、セミファイナルで行われる一回戦の勝利ですぐさま決勝の権利を持ってしまうことになってしまったのだ。
小峠の、B&G加入から端を発したミラクルマンとの抗争はタッグフェスに舞台を移し、IMPのメインの座を巡る決着戦にまで発展してしまった。
かたやこの日のメインである戦国タッグvsゼウス&原田線の勝者は、翌週のIMP大会ではハッスルチームを破らない限り決勝に進むことは出来ない。
秀吉と政宗の戦国タッグは大阪タッグ王者にも輝いたことのある名タッグである。かたやゼウスと原田のコンビも実績こそないものの、大阪タッグ挑戦者決定戦でタイガース&バファローと死闘を繰り広げた注目株のタッグチームである。この両チームの対決は激戦を予感させる好カードだ。
どちらから勝ち上がるのがより困難なのかは一目瞭然。両カードの間に分かれた明暗。これがどう優勝の行方を左右するのか。
大阪タッグフェスティバルは一番強いタッグチームを決める為のトーナメント。
全てのチームに必要なのは、ただ勝ち続けること。しかし優勝を誇るにふさわしい内容が求められることも必至。
勝負は時の運か、それとも裏打ちされた実力か。
たくさんのファンの目注がれる中、熱戦は始まった。

セミファイナルはまず小峠とタダスケ(B&G)の入場。揃いのパーカーに身を包んで入ってくる。タダスケは気合充分。小峠はコーナーポスト上で精神集中。
続いてミラクルマンとくいしんぼう仮面(ユニーク)の入場。合体テーマ曲に揃いの水玉コスチューム。くいしんぼうはいつもと同じようにリング周りを練り歩いて入場。

先発はミラクルと小峠。様子を探るような蹴りあいから小峠が高速ロープワーク。ジャンピングしてのレッグラリアートがミラクルにヒット。しかしすぐさまミラクルがタックル、マウントポジションでナックルを浴びせる。激しい揉み合いになる両者。
タダスケは二人をを引き剥がすとミラクルに拳の太鼓連打。それをミラクルは蹴りで応戦。タダスケはダッシュからかち込みタックル。衝撃でミラクルは場外へ。
B&Gチームの意気が上がる中くいしんぼうリングイン。小峠の胸に厳しい張り手。場外戦に持ち込むとタダスケにアッパーパンチの応酬から厳しいイス攻撃。
早くもキラーが顔を出すくいしんぼう。
リング内ではミラクルが蹴りで小峠を圧倒しコーナーに追い詰める。座り込んだところにダッシュからのエグい顔面ウォッシュ2連発。
くいしんぼうはタダスケをカットし、コーナーへかち上げエルボー、返す刀で反対コーナーで逆さづりの小峠の顔面にスライディングキック2連発。


ミラクルは小峠を引き起こすとミドルキック、ダブルアームスープレックス、垂直落下ブレーンバスターの強烈な連続攻撃。
休む暇を与えずくいしんぼうがナックル、ロープチョーク、ダイビングエルボー、コーナーでチョップ連打。
好連携のユニークチームが小峠を追い詰めていく。


なんとかドロップキックで脱出する小峠。タダスケはくいしんぼうにドラゴンバックブリーカー、二段階式ブレーンバスター、逆エビ固めの波状攻撃。
小峠もミラクルをロープを利用しての串刺しニールキックで倒して、セカンドロープ利用のボディプレス。
しかしソバットで逆転のミラクル。ダウンする小峠を尻目に場内にラダーとイスを投げ入れる。小峠にイスを山盛り乗せるとコーナートップからラダーをフェースクラッシャーの形で目がけて落とす!起き上がらせるとミラクルドライバーwithチェア!


場外に追放の小峠にくいしんぼうが追撃。
ミラクルは代わって入ったタダスケにフェースクラッシャーwithチェア。グラウンド卍固めで締め上げてからファルコンアロー、そしてムーンサルトプレスと畳み掛ける!
続いてツープラトンのブレーンバスターを狙うユニークチームだが、ここは小峠がスワンダイブ式ミサイルキックでカット!


そのまま失速しない小峠。くいしんぼうをコルバタ式DDT。続いて飛びつきウラカンラナを狙うがこれはライガーボムで切り返される!
とどめと関空トルネードを落とすくいしんぼう!しかしこれはタダスケがカット。それでもミラクルはファルコンアローで小峠を逃がさない!
ミラクルは小峠にローリングエルボー、そこからロープに走るもタダスケがエプロンサイドから捕まえて羽交い絞め。
そこに小峠はレッグラリアートを狙うが、寸前ミラクルが脱出でそのままタダスケに誤爆!
ミラクルはそこを背後から近づいてテキーラサンライズで投げようとする!しかし小峠はそれを丸め込みでさらに返す!
ガッチリ固められたミラクルは返せず3カウントを聞くことに!
突然の敗北に呆然とするユニークチーム。勝利するも疲労困憊のB&Gチーム。
ミラクルマンは立ち上がってマイクを握る。
ミラクルマン
「小峠!オレはしつこいからな!ミラクルマンしつこいぞって言われてもオレは終わらんからな!」
「先輩後輩、立場が逆転してオレが追っかけるでもええ、B&Gの他のヤツらなんか目に入らん!」
「とにかく小峠!これからもお前を狙ってくからなぁ、俺は終わらねぇからな、覚えとけ!」
ユニークチームが退場してやっとマイクを持つ小峠。
小峠
「くいしんぼう、ミラクルマン、あいつら強ぇよ、ヤベぇな」
「ケガ人が出てるからあんまり言いたくないけど、一人でもオレとタダスケが決勝に行くと思ったヤツいるか?」
「でも運がいいのかオレたちは準決勝なくて直接決勝や!今タッグフェスティバル、優勝に一番近い位置にいるのはオレたちなんや!こんなおいしい機会逃すわけないやろ!大阪プロレスに面白い革命作ったる!優勝するのはオレたちや!」


そして迎えたメイン。
先に入場はゼウスと原田(B&G)。コーナーでアピール。原田は入念なストレッチ。
場内が赤く照らされる中、戦国タッグが入ってくる。気負わず、いきり立たず風格さえ漂う入場。


B&Gチームは原田がゼウスを抑えて先発。戦国は相談の末、政宗が出てくる。
お互い距離を取りながら徐々にグラウンドの展開。マットを滑るような素早い原田の動きに付いていく政宗だったが腕や脚を極められてうめき声を上げる。アマレス的な動きでは原田優勢か。



政宗はコルバタで原田を引き離して秀吉にスイッチ。B&Gチームもゼウスが出てくる。迫力のあるチョップ合戦、タックル合戦。まったくの互角。
そこに政宗が出てきて連携、ロープに振ってWのチョップ。ゼウスは後ずさりながらロープに飛んでタックルでお返し。
ここでB&Gチームの連携、政宗に原田が串刺しエルボー。そのまま振って迎えたゼウスが豪快に後ろへホイップ。
秀吉は原田とチョップとエルボーの打ち合い。そこにゼウスが入ってくるも二人まとめてラリアットとネックブリーカーの迫力技で同時攻略!
立ち上がったゼウス、再び秀吉とパワー合戦。ラリアットの打ち合い、今度はゼウスの勝利。立って来いとアピールする不敵なゼウス。

ゼウスのブロックバスターで秀吉が投げ出され場外戦にもつれこむ両チーム。秀吉はゼウスを2階まで引き連れて2階席付近で乱闘。秀吉は1階にゼウスを落とそうとするが、あきらめると売店近くで床にペディグリー!ゼウスはうつ伏せにダウンしたまま。

孤立した原田を戦国が攻め込む。秀吉が串刺しラリアットと撃鉄を浴びせてから逆エビ固め、そこに政宗がジャストヒットの顔面ドロップキック。

政宗はロープ際でチョーク攻撃から延髄斬り。秀吉がミドルキックで寝かせて再びチョーク攻撃。

ロープ際でダウンの原田に政宗、リングインのアトミコと見せかけて着地。小馬鹿にしたようなキックからバックドロップ。そして改めてリングインのトペ・アトミコ。

秀吉はさらに原田を追い詰めコーナーでの恒例いつものやつ。チョップとラリアットの連打に原田はリングで大の字。

なんとか政宗をフロントスープレックス投げて脱出に成功した原田。追いすがる秀吉をエルボーで突き放すとゼウスにタッチ。ゼウス満を持してのリングイン。
ゼウスは秀吉をリフトアップスラム。続いて政宗をベアハッグからの豪快スープレックス。
しかしここで政宗がゼウスの足を捕獲でアンクルホールド。ゼウスは負傷から癒えていない左足を絞められて苦悶の表情。体を返して逃げようとするゼウスだが政宗も同時に体をひねり体勢は変わらない。2分近くアンクルホールド締め続けられたゼウスは動きが止まってしまう。

なんとか片方の足で蹴り上げて技を解いたゼウス。政宗のカウンターを潰して両者はほぼ同時にスイッチ。

秀吉は突っ込んできた原田をパワースラムで迎撃。しかし原田は立ち上がって秀吉を抱きかかえるとコーナーまで走って串刺しタックル。
エルボー連打の原田に秀吉はお返しとばかりに重爆ドロップキックに顔面スタンプ。続いてコーナーから走りこんでのラリアットを狙おうとする秀吉だが、逆に捕まってコーナーにフロントスープレックスで投げ返される。入ってきた政宗もコーナーの秀吉めがけてフロントスープレックスで投げる!

B&Gは政宗を捕まえると同時のラリアットとタックルで連携。ツープラトンのパワーボムは秀吉がカットイン。
政宗と原田は場外。秀吉とゼウスはラリアット合戦。


打ち勝った秀吉は場外のゼウスと原田に大迫力のトペ・スイシーダ!
乱闘の中リングに上がってきたのは政宗と原田。政宗がスクリュードライバーで落とせば、原田がハーフハッチスープレックスで投げ返す。

もつれる両者はエプロンサイドでの攻防に。原田は政宗をエルボー連打からジャーマンで投げようとするが、逆に政宗は急所蹴りから急降下DDTを敢行!エプロンサイドの固い面に頭を打ち付けられた原田は戦闘不能に!
ここで戦国はゼウスを集中攻撃。秀吉がラリアット合戦を制すると政宗が足四の字固めとアンクルホールドで執拗な足攻め!絡み付いたように離れない政宗。再び動きを止められるゼウス!

秀吉はゼウスを軽々と持ち上げエグい山折りでフォールを狙うもここは原田がカット。しかし逆に捕まってしまった原田は秀吉にコーナーで肩車されてしまう。
コーナーに登り合体の雪崩式フランケンを狙う政宗だがここは原田に腕を捕まれ投げ捨てられてしまう!強烈にマットに叩きつけられる政宗は致命的なダメージ!
秀吉は政宗を助けて原田をコーナーに追い詰めるも、スピアーを避けられてコーナーに激突。原田はそのまま秀吉を分断して後をゼウスに託す。


ゼウスは政宗を高角度チョークスラム。すかさずフォールも政宗は執念で返す!
政宗はヨロヨロと立ち上がる。
それを待ち構えたゼウスはパワーボムの体勢、そして吼える!高々と持ち上げられもがく政宗、しかしそこから落差充分のゼウスボム!
ゼウス説得力充分の一撃で政宗から3カウント!

試合後のマイク
ゼウス「チョットしんどいから待ってくれ...原田よろしく」
原田「オレたちが勝ったぞ!今年のタッグフェスティバル何が起こるか分からんけど優勝するのはオレたちや!」
ゼウス「今日の試合チョットだけ痛くてしんどかった。今日は絶対勝ったろって思ってたから、勝ってメチャメチャ嬉しいわ!ありがとう!」
セミとメインは勝敗の行方に歓声と悲鳴の入り混じる、大阪プロレスの9年間が築きあげた団体の力を証明する闘いとなった。
正規軍勢が消えてなお、ベテランと若手の均衡した力がつくり出す熱は選手一人ひとりの鍛錬の賜物といえるだろう。
それであったとしても今回の結果は衝撃的であった。
多団体からの参戦のTAJIRIとKUSHIDAのハッスルチームを除けばIMPに勝ち残ったのはB&Gの選手のみ。
可能性として見えてきたのは、誰も想像しなかっただろうIMPメインでのB&G対決だ。
そしてB&Gによってタッグフェス優勝と準優勝が占められたとなれば、いよいよ彼らが世代という壁を打ち壊したという既成事実を生む。
ここからファンの目は変わるかもしれない。まずは結果を見せた。そして彼らは未来への期待を背負うだろう。
その先に待つのはベテラン達によるB&G包囲網。より激しく感情がぶつかりあう終わりなき闘いの始まり。
どちらが団体を守るにふさわしい輝きを持ちうるか。
ベテランはプライドを懸けて高くそびえ立つ。
B&Gは引くこともままならぬレジスタンスとして勝利を宿命付けられる。
大阪プロレスの革命を告げる鐘が鳴り響くか。決戦まであと5日。