2009年02月26日

大阪ハリケーンという長い一日 −中編−

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中編です。ブログと思えないほどダラダラ書いてます。
色んな意味でスイマセン。

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◎「西口プロレス提供試合」タッグマッチ30分1本勝負
 アントニオ小猪木&○ハチミツ真也
 (6分58秒スワントーンボム→体固め)
 ラブセクシー・ローズ&×ラブセクシー・乙羽屋

◎特別試合タッグマッチ30分1本勝負
 アントニオ小猪木&×ハチミツ真也
 (3分43秒リキラリアット→体固め)
 えべ波辰爾&○勘州力

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大阪ハリケーンに助っ人として参戦してくれた西口プロレスの皆さんは本来であれば大歓迎。しかしあまりにも無計画で冗長過ぎたように思う。

結果として大会の開催時間はこのボーナストラックが加わったことで約4時間半と言う驚異的な長さ。全試合終了して会場を出たのは20時近かったのではないだろうか。これは正直言ってマズイ。

帰る時間を考えると家族連れであればどんなに遅くとも23時には帰宅しておきたいところだ。関西圏のファンならさして問題は無いだろう。しかしここで困るのはビッグマッチゆえに普段は新宿FACE大会などを観戦している関東圏のファンも訪れているという事。
そうなると約4時間前には大阪府立を出ないと関東圏の家族連れファンは23時までに帰宅できない計算になる(東京駅からの帰宅時間も考慮した場合)。逆算すると19時、夕飯のことを考えればもう1時間前倒しで帰らねばならないかもしれないから18時。少なくとも3時間くらいで全試合終了するだろうと踏んでいた方は19時台の新幹線を取っていたはずだ。
観客の中には西口プロレスvsユニーク軍を観た時点で時計を気にした方もいたのではないだろうか。
試合数も多いので長丁場は覚悟していたもののこれでは配慮が足りない。メインイベントを観れないまま泣く泣く会場を後にしたファンが多かったのもうなづける。

それに西口プロレスの評価うんぬんより試合数としてカウントされていない試合がこれだけ長くなってしまうと集中力が散漫になってしまう。せっかくのTV露出の力で観客を呼んでくれたのに、それ以降の試合に感情移入しづらい状況を生んでしまったように思える。
それならもっと試合開始を早めるなり改善をしなければ、ボリューム満点の大会も本当に伝えたいものを見せられないまま尻切れトンボ。最も重要な観戦リピートに繋がらない事になってしまう。

個人的には小力のパラパラはショートバージョンで、そして試合は小猪木&ハチミツvsえべ波&勘州だけで良かった。
もしくは西口プロレス提供試合にユニーク軍乱入&イチャモンから次週のサタナイかホリパラでスペシャルマッチ。多分これを想像していたファンも多かったろう。
西口プロレスの選手がそつなくプロレスの基本を見せてくれていただけに残念。デルフィンアリーナで続きが見られるという展開なら一般客にとっても足を運びやすかったはずだ。

惜しみなく提供しようとするサービス精神は理解できる。理解できるからこそそれを満喫させる手際の良さも必要だと思うのだ。

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第5試合 「The Bodyguardデビュー戦」60分1本勝負
 ○ゼウス
 (8分03秒NO19→体固め)
 ×The Bodyguard

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The Bodyguard(以下ボディガー)こと倉川昇氏のデビュー戦目当てで陣取っていた応援団もいた。もちろんハッスルなどでゼウスを知り、彼を観たくて来た初観戦の方もいただろう。
しかしファンの多くはスポニチですっぱ抜かれた「ゼウスボクサー転向」の記事を何らかの情報で知り、この世紀のパワー対決への興味が半減してしまっていたのではないだろうか。

もちろん予感はあった。随分前からゼウスの態度にはプロレスに身が入っていない、どこか大阪プロレスを客観視している様子が見て取れていたから。
それでも(少なくとも自分には)彼の成り上がりのてっぺんはプロレスという世界で実現させて欲しいというどこか願望めいたものがあった。大阪プロレスを離れてもどこかメジャーな団体で自身のポテンシャルを高めてゆく彼の姿を想像したこともあった。
しかしゼウスの夢はプロレスファンの視野を超えた領域ですでに動き出していた。50年振りに復活する日本プロボクシングヘビー級への挑戦。そのあまりにも唐突な転向宣言。ファンは完全に置いてけぼりだ。もちろんその自分勝手とさえ言える行動力が逆に痛快とも言えるのも確かで、今までそれに魅力を感じ付いてきていたファンも多かった事だろう。

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それだからこそゼウスは試合後のあのマット上で初めて自分の夢を語り満場の観客にも、そして自分自身にも明確な区切りをつけるべきだった。ところが事前のリークによって彼がマイクを握った途端「やっぱり言うんだ」といった空気に会場が包まれたように見えた。下手をすれば試合を観る前からその瞬間だけに注目が集まっていた感があった。
ゼウス自身もその空気を感じ取っていたのか、転向宣言をどこか笑い飛ばした感じの妙に乾いたものにしてしまった。それが彼のキャラクターといってしまえばそれまでだが、その彼の言葉から遅咲きとなる挑戦に対しての熱いものが伝わってこなかったのが非常に残念だった。Tシャツを投げてサービスするよりやるべき事があったはずだ。

やはり関係者はマスコミに対して徹底した緘口令を引くべきだった。あの場でのゼウスの一言から夢は切り開かれるべきだったのだ。そうすればその夢はより多くのファンの夢にもなったかもしれないのに。
あと1日、あと1日待ってくれれば良かった。もし集客目的で先に情報公開をしたのなら、それはこの日デビュー戦として注目を浴びるべきボディガーに失礼なのではないか。あれだけデルアリで前振りを見せ付けられ、その正体を見届けるために訪れたファンに対してもあまりにもビジネスライクで冷淡な仕打ちなのではないか。

試合で両者は迫力あるぶつかり合いを繰り広げた。お互いを軽々と持ち上げボディガーはザ・バウンス(BTボム)、ゼウスはジハードと一撃必殺の技を決めるも譲らない。最後はラリアット合戦を制したゼウスが高角度チョークスラム(NO19)でボディガーからカウント3を奪って勝利。
しかし力と力が交錯する時の「おぉーっ」といった会場のどよめきが、何かただの品評会の席でのものに聞こえてしまったのは自分だけだろうか。
ゼウスの心、すでにここにあらず。そんな事務処理的な感じがしてしまった。

今のゼウスは3月のプロテストに向けて特訓に入っていることだろう。プロレスラーゼウスはすでにこの世に存在しない。彼の破天荒なファイトはもう映像でしか見ることができない。これまで支えてくれたファンに媚びる事も無く何の余韻も残さずに、そして当然の道のりとでも言うようにすんなりと次のステップへと進もうとしているゼウス。
何て憎たらしいほどの唯我独尊ぶり。

自分はゼウスを許さない。その裏切りの証とでも言うべきプロボクシングヘビー級のベルトを腰に巻くその日まで絶対に許さない。

だから頑張れ、ゼウス。

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セミファイナル 大阪プロレスタッグ選手権時間無制限1本勝負
 <王者組>×タイガースマスク&ブラックバファロー
 (16分51秒クロスアーム・スープレックス・ホールド)
 <挑戦者組>ザ・グレート・サスケ&○アジアン・クーガー

※20代王者が初防衛に失敗。サスケ&クーガーが第21代王者となる。

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大阪プロレスのタイトルマッチにみちのくプロレスの象徴ザ・グレート・サスケが絡むということで一般的なプロレスファンからすると一番興味をそそられるカードだったのではないか。
しかし大阪プロレスのファンからすればこの組み合わせには一抹の不安を覚えたことも確かだろう。宇宙大戦争など突飛な試合展開を持ち味にしている最近のサスケと、それを「トンチンカン」と評し自らもその世界に飛び込もうとするタイガースマスクとブラックバファローのタッグ王者組とが作り出す空間と、大阪ハリケーンというビッグマッチでのセミファイナルしかも大阪タッグ選手権というシチュエーションが相容れるものなのか疑問視する向きがあったからだ。

事の流れはクーガーがタイトルマッチを認めさせる為に「ムチャルチャ第3のメンバー」サスケをパートナーに連れてきて、それに因縁浅からぬタイガースが食いついてきたワケなのだからタイトルマッチ不要論うんぬんを語るのは本末転倒なのだと思う。しかしこの試合が大阪タッグ選手権試合ではなくスペシャルタッグマッチだったらもう少し違った目で見られたのかもしれないと思ってしまった。

そもそも大阪プロレスのファンは団体の特徴とでも言うべき「刺激的なシリアス」と「笑えるユニーク」という双方のバランスを上手に楽しんでいる。ユニーク中心の選手がいざとなればシリアス中心の選手と真っ向から渡り合えることを知っているし、シリアス中心の選手がユニークの世界に飛び込む事で新しい魅力が発見できることも知っている。
それは絶妙な均衡の中で住み分けられた世界。しかしサスケはその境界線を軽々と飛び越えてしまった。

試合はリング内外にイスにテーブルにラダー、そして自転車という様々なアイテムが駆使される大乱戦。サスケは勝手に暴走しながらついにはタイガースの魔術によって蝋人形化し戦線を離脱。たちまち窮地に陥るクーガーだったがセコンドのツバサのアシストもあって最後はクロスアームスープレックスでタイガースから3カウントを奪い勝利。
クーガーは蝋人形のまま動かないサスケを傍らに大阪タッグ新チャンピオンとしてベルトを受け取ることに。本来なら厳かであるべきセレモニーを見ながら、自分はその場内の緩いムードに、そしてあまりのサスケの徹底ぶりに少々幻滅してしまった。
なぜだろう。

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然るに大阪シングルと大阪タッグという大阪プロレスの2大タイトルは歴代のチャンピオンによって高められて今も存在するものだと思うのだ。そのベルトには王者達の血と汗がしみこんでいるといっても過言ではない。ベルトを持つ者はその者達の栄光を曇らせてはいけないのだ。
そう考えると今回のタイトルマッチが「イエス」か「ノー」かと言われれば個人的には「ノー」だ。

この試合の勝敗には何の感慨も無かった。それはそうだろう、どちらが王者たるべきかの覇を競う神聖な領域にファンタジーが入り込んでしまったのだから。
ザ・グレート・サスケという存在がどれだけ独自の世界を持つ偉大でレスラーであろうとも、タイトルマッチそしてベルトの価値を疑問視させるような試合、すなわちシリアスな闘いの純度を極端に下げさせるような行為はご法度だと思うのだ。
蝋人形というのも試合後のエッセンスとしては面白いのだが試合の趨勢を左右する場面で、しかもパートナーが最後まで離脱という異常事態を生んでしまったのはいただけないのではないか。これでは王者チームのこれから先の防衛戦にまでその影が付きまとってしまう事になってしまう。
もちろんサスケワールド見たさにファンは集まるだろうが、タイトルマッチの存在意義自体はその強烈な個性の前に薄まってしまうことだろう。
頭が固い見方なのかもしれないが大阪タッグ選手権を苦笑いで見つめる事になってしまった今回のような試合展開は自分は歓迎できない。

しかし今回の出来事は悪いことばかりではないとも思う。
平日プロレスをこなしていく中でルードとしてのスタイルに変化が出始めているタイガース。そしてそれを共に試行錯誤しながら表現してゆくバファロー。
ルード軍全体の方向性がどうであれ、この二人は確実に大阪プロレスという団体の中でのルードがどうあるべきかを真剣に取り組んでいる。
そんな彼らがタッグ王者として、これまた他の追随を許さないキャラクターを誇るサスケと闘う道を選んだのは半ば必然といえるかもしれない。
特にタイガースはサスケというプロレスラーをリスペクトしていると思われる部分が随所に垣間見える。その奇妙なライバル関係はどちらからともなく引かれあい「じゃじゃ面対決」そして「タコ焼き対決」とつつき合うのを楽しむかのように独自の世界を築いている。
それにこの一連の対立によってサスケのエキスがタイガース少しずつ注入されているようにも見える。なぜならルード化したタイガースとサスケのルードバージョンである青サスケのイメージは少しづつ近づいていっているような気がするからだ。
勝手な思い込みかもしれないがその正義と悪、虚と実を巧みに渡り歩くバランス感覚を持ち得るサスケの素質はタイガースマスクにも充分備わっていると思う。
だからこそサスケとタイガースはシンクロして見えてしまうのかもしれない。

今回のような舞台だったからこそ受け入れられなかったものの、サスケとタイガースそしてルード軍といった展開は大阪プロレスの中の新たなる路線として大きな可能性を秘めていると言える。
これからの接触によってタイガースそしてバファローは何段階も変わってゆくのかもしれない。それは進化か深化なのか。

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メインイベント 大阪プロレス選手権試合時間無制限1本勝負
 <王者>×秀吉
 (27分50秒ファイヤーバード・スプラッシュ→体固め)
 <挑戦者>○ビリーケン・キッド

※秀吉が3度目の防衛に失敗。ビリーが第15代王者となる。

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栄誉ある大阪ハリケーンメインイベントの権利を与えられるのはたった二人。
一人は昨年タッグ屋からシングルプレーヤーとして爆発的な成長を遂げ、一気に大阪プロレスの頂点まで駆け上がった第14代大阪プロレス王者、秀吉。
もう一人は昨年の大阪ハリケーンで復帰しながらも再び治療のため長期欠場を余儀なくされ、再復帰後に天王山も制するものの決勝戦で再び肩を負傷し欠場というまさに天国と地獄を見て来た男ビリーケン・キッド。

昨年は日本でも珍しい覆面剥ぎマッチが注目を集めた大阪ハリケーン2008のメイン。そこでタイガースマスクとブラックバファローが繰り広げた死闘はタイトルマッチという枠だけに収まらず「鬱」という深遠なテーマと共に観た者に深い感動を与えるものとなった。
彼らがハリケーンで紡いだストーリーは真に迫るリアリティがあり、これにより更に深まった二人の絆はルード転向となった今も大阪プロレスという物語の主軸で流れ続けている。
それと否が応にも比べられてしまうメインイベントの質、そしてテーマ。果たしてそれを打ち破ることができるのか。

大阪ハリケーン2009で秀吉がメインを飾るのにファンであれば何の意義も無いと思う。沖縄プロレスに選手が移籍し、多くの選手が負傷する中で常に大阪プロレスの最前線で闘ってきた彼は理想のチャンピオン像を表現すべく闘いで、そして言葉で大阪プロレスの闘いを牽引してきた。
過酷な肉体改造を経て鍛え抜かれた肉体はパワーだけでなくスピードをも兼ね備えて数々の難敵を打ち破っていったのだから。
それだけに復帰間もなく試合勘が鈍っているだろうビリーに、有言実行でハリケーンまでベストコンディションを維持し続けてきた秀吉の相手が務まるのかという懸念もあった。それほどに2008年における両者の過ごしたプロレスでの密度は異なっていたと言えるのだ。

それでも天王山優勝を成し遂げたビリーがベルト挑戦をアピールすると秀吉は喜んでこれを受け入れた。
一度はビリーの挑戦を返り討ちにした秀吉が、再び彼を挑戦者として迎え入れたのは、大阪ハリケーン2009が「大阪プロレス絶対王者」という彼の覇業の最終プロセスであると同時に、彼のプロレス人生を表現する集大成の場にする必要があったからではないのか。
秀吉が自分の知っている男であるならば昨年2008年というのは彼の10周年というメモリアルイヤーであった(このあたりは深く言及しないが)。マスクで顔を隠そうと彼のその経歴はプロレスラーとしてはもっとも鍛錬と経験のバランスが取れた、まさに絶頂期に差し掛かっていると言えるのだ。
想像の域になってしまうが、その記念すべき年にチャンピオンとなった秀吉が新たなる一歩を踏み出すにあたって、翌年の大阪ハリケーン2009という舞台では彼の足跡を最も知る者との闘いがどうしても必要だったのではないだろうか。
それを物語るように記者会見の席でビリーが口を開く。

「今から数年前、僕が初めて日本で試合をする日、お互い、出会ったのが初めてでした。彼はまだ練習生で、僕も名前も姿も違うレスラーでした。時は経ち、彼がデビューしてシングルマッチをする日がありました。僕はまだ日本に帰国したばかりで日本のプロレスに慣れておらず、すごい不安を持っていましたが、彼との闘いで一つの壁を越える事が出来ました。そして時は経ち、この大阪ハリケーンという舞台でまた彼と闘う機会に恵まれました」

ビリーと秀吉はまったく同じ団体を渡り歩いているのではないにしろ、お互いの存在を知る先輩と後輩の間柄。ビリーの日本でのプロレスに確かな自信を持たせたのが秀吉であれば、フリーとして団体を渡り歩いていた秀吉を大阪プロレスに定着させたのはビリー。
共に存在を意識しあいながら、その恩義を返すに相応しいタイミングを彼らはずっと心待ちにしていたのかもしれない。
生命を削る闘いこそがプロレスラーである彼らにとって最もシンパシーを感じる場所であるのだろうから。
だからこそこの日秀吉は序盤から容赦の無い攻撃を仕掛けた。ゴングが鳴ればそこは二人だけの世界なのだとでも言うかのように。

試合は秀吉の猛威をひたすらビリーが耐えるという展開。ビリーも単発では返していくものの秀吉の象徴とでも言うべき凄まじい打撃の前に何度もダウンさせられてしまう。
それでもフォールを返し続け、秀吉必殺の刀狩も凌ぎながら粘り強く反抗の機会をうかがうビリー。焦りの見えてきた秀吉はコーナーを利用した雪崩式の技で畳み掛ける。雪崩式ブレーンバスター、雪崩式落城とビリーの体を耐えがたい衝撃が何度も襲いかかる。
ここで満を持してリング中央での刀狩が決まりビリーは絶体絶命。エスケープしようとしても何度も回転して退路を塞ぐ非情の王者秀吉。
ところがこれをも耐え抜いたビリーは脅威の反撃。秀吉のダメ押しの雪崩式ペディグリーを踏ん張ってみせると雪崩式コウモリ吊り落し。続けて必殺のベルティゴ。
秀吉も大技の応酬を執念で返してゆくが蓄積したダメージが足にきていて立ち上がることもままならない。
そしてビリーはファイヤーバードスプラッシュを解禁。説得力充分の一撃は秀吉の体力を最後の一滴まで奪い去り、カウント3と同時に新王者ビリーケン・キッドが誕生した。

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ビリーが圧倒的な不利を覆すに至ったものはなんであったろうか。
プロレスラーにとってケガは付き物であるが、闘うことが仕事である彼らにとって負傷欠場は体だけでなく心にもダメージをもたらす。3度の復活があったということは3度の挫折があったという事だ。それを跳ね返したビリーのプロレスに対する「飢え」は最も必要とされる場面で彼に驚異的な爆発力をもたらしたのかもしれない。
更にそれを支えたファンの力、復活への期待。ビリー自身が語るとおりそれは間違いなく彼の精神力に相乗効果を与え、奇跡的な回復力を与えたのだろう。
そしてそんなビリーを真っ向から受け止めた秀吉。彼が経験の浅い大舞台で持てる能力を全開放する事ができたのも、それだけビリーの復調ぶりがそれを受けられる状態であった事を示しているし、ビリー自身も秀吉が相手だったからこそ観る者の想像以上の粘り強さを発揮できたのではないだろうか。お互いのリミットラインが分かっているからこそ表現できる闘いがそこにはあった。
とにかく試合は戦前の不安を払拭するような大熱戦となり、それはファンのみならずそれも見届けた初観戦の人たちにも響いたと思う。
試合が決まるとともにダウンする秀吉に被さるように抱き伏せるビリー。昨年のようなテーマの重さは無くても、深さという点においては勝るとも劣らない事を象徴するワンシーンだった。
ビリーケン・キッドと秀吉という二人が過ごしたプロレス人生が凝縮された一戦、それは大阪ハリケーンという渦の中心でしか表現しえぬものだったのだろう。

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かくして万全の態勢で勝負に臨むも天下人は志しにあと一歩届かず、再び挑戦者として己を磨くこととなった。そして新王者として追われる立場となったビリー。
しかし彼らだけのストーリーもこれで完結したのではないはずだ。
ビッグマッチの重責を果たしたビリーと秀吉にはこれからも大阪プロレスに話題を提供し続ける義務があるのだから。
ビリーケン・キッドはその太陽のような存在感で大阪プロレスの楽しく激しいプロレスを体現して欲しい。そして秀吉は言わば月の存在。ビリーという太陽がまぶしく光れば光るほど月である秀吉も神秘的な輝きを増す。
洋のビリーに和の秀吉、柔のビリーに剛の秀吉、テクニックのビリーが喝采を浴びればパワーの秀吉はどよめきを誘う。スタイルの異なる二人はこれからも切磋琢磨しながらより結びつきを強めていくはずだ。
プロレス界でこういった2極エースの体制はとても魅力的で受け入れられやすい。ジャイアント馬場とアントニオ猪木、藤波辰巳(現:辰爾)と長州力、三沢光晴と川田利明、最近では棚橋弘至と中邑真輔もこれに当てはまるのだろうか。
それらの活躍が証明するように、今でこそ同じ正規軍として居を構える二人ではあるが、彼らの闘いは延々と続いてゆく名勝負数え歌として「ハズレ無しのカード」になる可能性を秘めているのだ。眠らせておくのは正直もったいない。
もちろん信頼し合う者同士でタッグ王座などを狙ってみるのも面白いだろう。しかし彼らがそれぞれの理想をユニットという形として見せてくれたとき、ルード軍を巻き込んだ3つ巴の構造となり大阪プロレスの勢力図を更に面白いものにしてくれるのでは無いだろうか。反発しあうのではなくお互いを高めあうための対立、そんな素敵なライバル関係はプロレスの醍醐味を存分に味あわせてくれる事だろう。

流れの速い現代のプロレス界は観客動員の維持の為に「常に刺激的なカードを提供し続けなければいけない」という半ば強迫観念に似た意識が働いていて、夢と称して急速なスピードで手前みそなカードを連発して消耗し疲弊してきている。
そんな今だからこそ突発的な関係ではなく太い幹のような物語を育ててから枝葉を作り上げていくべきではないか。人間関係が希薄な現代だからこそビリーと秀吉をもっと人間臭く見てみたい。そこにタイガース、クーガーといった個性的な面々が凌ぎを削り、新たなる局面を築いていけばいいのだ。
「ゆとり」世代が溢れる世の中で「こいつだけには負けたくない」というようなハングリー精神はとても貴重だといえる。
選手はその奥底に流れる感情を隠さずリング上に投影しながら、ファンはそれを理解した上で様々な人間模様が入り組んだストーリーに一喜一憂する。それがプロレスという大河ドラマの魅力なのだから。

大阪プロレスが10周年を迎える今年。年々顔ぶれが変化してきた中でビリーケン・キッドと秀吉が新たなる歴史を刻み始める事を期待したい。

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久しぶりに感情の赴くままに書いてしまいました。想像だけで書いている部分もあるので見苦しい部分もあるのかもしれません。
それでも今の悲観的な出来事がニュースを埋め尽くす日常の中だからこそ、非現実の中で熱を帯び続けるプロレスは必要なのだと自分は考えます。

戦後の日本を精神的に支え、熱狂的な支持を受けた力道山。高度成長期という世相を反映するかのようにプロレス黄金期をもたらしたジャイアント馬場とアントニオ猪木。
ならば意気消沈した今の日本に今一度「しっかりせんかい!」と背中を叩いて前に進ませるような力をプロレスには望みたい。
大阪プロレスはプロレス界全体ではちっぽけな1団体に過ぎないのかもしれない。でも全国に散らばる団体それぞれがプロレスの健在ぶりを見せてくれたとき、それを観た一人ひとりが活力を与えられて会場を後にすることができると考るのだ。
それを一番素敵に表現してくれているのが大阪プロレスであって欲しい。そう思いながら書きました。失礼な表現がありましたら申し訳ありません。

という事で、その後の出来事と大会の総括は後編にて。
posted by ラポン at 23:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 大阪プロレス観戦記2009 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ラボンさま、レポおつかれさまでした。
待ちに待ったラボンさまのハリケーンレポ、
熱いわ!
ありがとうございます。
これからもずーっと見守っててくださいませ。
ラボンさまのような方がいらっしゃればプロレスは不滅だわ。
Posted by 小姐 at 2009年02月27日 16:47
>小姐さん

ありがとうございます♪

かなり独りよがりな記事なので後から読むと間違いなく恥ずかしいです(汗)
一ファンがピーピー言ってるだけですが、それで何か伝わったなら嬉しいです。
Posted by ラポン at 2009年02月28日 00:07
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