2008年05月26日

つきあげるチカラ

意識する存在にとって、生存するということは変化することであり、
変化するということは経験をつむことであり、
経験を積むということは限りなく己自身を創造していくことである
                         アンリ・ベルクソン


5試合のうち3試合が未発表のまま当日を迎えた5月24日のサタナイ。
ゼウスもKUSHIDAもいない。
そこに大阪プロレス変化の波はあったのか。

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オープニングマッチは小峠篤司に新人の三原一晃が挑む一戦だ。
小峠のプロレスは鋭さのプロレスだ。鋭い蹴りで攻め、鋭い言葉で責めるサディスティックなスタイル。それは自分より格下の選手に向けられた場合にいかんなく発揮される。
対する三原は突貫ファイト。技はまだまだこれからだから、武器はその体。エルボーにしろタックルにしろ体ごと浴びせる。かたまりで当たるのみ。
その突撃をソバット一発で止めてしまう小峠。ダウンすれば蹴りまくる、踏んづける、膝を落とす。
そして小峠が容赦ないほど三原に説得力が生まれてゆく。ボディスラムで反撃。まだ不恰好なドロップキックが観客を沸かせる。
このハッキリとした強弱の図式はまさに銃と棍棒。三原はまだ使いこなせない棍棒を振り回す。それを小峠が一発必中で撃ちぬく。
最後はトラースキックで三原は悶絶。そして3カウント。あっけなくも当然と言える結果。
でも小峠だって最初から自分のスタイルを使いこなせなかったはず。彼の今の姿は長い時間をかけてそれを自分のものにした結果なのだ。
だから三原も次は変わらないかもしれない。でも次の次は変わるかもしれない。
火を得て、武器を得て、それを使いこなすことで人類となった原人のごとく、ワンショルダーに身を包む新人は爆発的進化を秘めて闘い続ける。

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続く第2試合は先輩に囲まれて瀬戸口デビュー初のタッグマッチだ。
対戦相手のミラクルマンとえべっさんは打撃にグラウンドに若い瀬戸口を攻める。そのシリアスファイトは相手がタイガースマスクにスイッチしようともちろん変わらず、リング上はユニークを廃した真っ向勝負が展開されてゆく。
パートナーであるタイガースも瀬戸口を極端にフォローせずに見守りながら要所でゲキを飛ばす。
そうなのだ、この試合は瀬戸口の教育マッチでもあるのだ。彼と闘うときは、その肉体に勝負の厳しさを教え込み、彼がコーナーに控えるときは熱いプロレスで手本を見せる。瀬戸口にとってはその全てが吸収するべき大阪プロレス。
観客も当初は、ユニークも考えられたその組み合わせでの激しくもスピーディーな闘いぶりに少しとまどっていたが、ミラクルやえべっさんが見せる新鮮な姿に歓声を送りはじめる。
えべっさんが串刺しドロップキックやアルゼンチンバックブリーカーを見せれば、ミラクルはかかと落としに顔面ウォッシュそして北側スクリーンに足をぶつけるほど高いケブラーダ。
瀬戸口はそれを見て目指す目標の高さを知り、3人は1人の新人により若き日の気合いだけで勝負した日々を思い出す。
たしかに瀬戸口はまったく付いていけなかったかもしれない。第1試合の三原に比べて感情的にスマートな印象を持つ瀬戸口はこういったときには目立たなくなってしまう。
しかし彼の混じった闘いは、試合の意識を一段階上昇させる効果があった。普段の団体抗争とは違う、後輩に自分の経験値を見せるファイト。大阪プロレスはシリアスもあればユニークもある。しかし基本が成り立ったプロの技術の上に両方が成り立っているという事実。それは見ているものにもしっかり伝わった。
これを見てタイガースとミラクル、タイガースとえべっさんのシリアスな一騎打ちのイメージも膨らんだ人もいるだろう。瀬戸口の可能性を観る試合は先輩達の可能性をも引き出したのだ。
最後はミラクルが裏STFで瀬戸口からギブアップを奪って試合終了。ひざまずく彼を取り囲むように立つ3人。しかし誰も瀬戸口の手を上げて健闘は称えない。
そうなのだ、こんな試合では次第点は与えられないのだ。彼の闘いは勝利よりもまず、周り納得させる何かを掴む闘いなのだから。

新人同士のシングルでは連勝の瀬戸口だが、この日は三原の方が光った。シングルとタッグの違いはあるが、三原の瀬戸口では表現できていないド根性が観ている者にも感じられたのではないか。
タイガースは帰り際、その手で瀬戸口の両頬を掴んでゲキを入れた。何度も何度も。その度にうなずいて何度も「ハイ!」と叫ぶ瀬戸口。
新人達は愛されている。先輩の皆が成長を願っている。だからこそ激しく打たれ、強く投げられる。それはとてもとても幸せなことなのだ。

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そしてそんな先輩らの手を離れたタダスケが、第1試合後リングに上がりマイクを持つ。
「そんなんがやりたいんですか?」
小峠に問いを投げかける。実力がありながら方向を定めない同世代に共闘を求めたのだ。
B&Gは上と当たることで伸びていっている。それは誰もが認めるところだ。
タダスケはその中でも成長著しい。たしかに彼にとってのこの数ヶ月の闘いは、そのキャリアと同じくらいの価値を持つのかもしれない。
そんなタダスケが、B&Gを小峠が加入するにふさわしいユニットだと彼自身に納得させる為、セミファイナルのvs正規軍戦で結果を出すという。
自分がB&Gを求めたと同じように小峠にも変化のきっかけを求めたのだ。

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そのセミファイナルは奇襲を仕掛けるもこれが仇となり、正規軍でも荒っぽいファイトで売る二人に火をつけることになってしまう。
ゼウス不在のB&G。逆に油断をさせれば付けこむ隙があったろうが、それはB&Gのスタイルではないと言う事なのだろう。
たしかに原田もタダスケも当たりは強くなった。しかし残念ながら彼ら二人では勝ちに持っていく為のパターンがまだ無い。原田は片山ジャーマンまでつなぐ強力な技が欲しい。タダスケだってパワーは付いたが、しかしそれはまだバファローを、クーガーを超えるものではない。ハーフハッチスープレックスを決める、ブレーンバスター勝負に勝つ。観客は沸いてもあわや、という雰囲気に結びつかない。
例えいくら攻められても一瞬の間隙を突いてクーガーが多様なギロチンを落とす、バファローが強烈なラリアットを叩き込む。そして正規軍に形勢は逆転される。しかもそういった局面を見れば見るほどゼウスの姿を浮かべてしまうのだ。6人タッグならタダスケが耐えてゼウスにつないで流れを変え、原田とのコンビプレーで追い込むパターンは強み。今まで彼の破格な強さに頼ってしまっていた感のある二人。まさに「ゼウス=ギリシャ神話の最高神」という神頼みだった事実は皮肉ですらある。
試合は一度はバファローのラリアット、バファロードライバー、バックドロップの必殺技攻勢を切り返し耐え抜くタダスケだったが、エプロンサイドでのクーガーのギロチンで原田が分断された事もあり、再度のラリアットからバファロードライバーの黄金パターンは返せずそのままフォール負け。

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これを受けて小峠はどう感じたのだろうか。
今まで正規軍とルード軍の対立図式に割って入る形から、少数ユニットとして容赦ないファイトを耐えることで判官びいき的な声援を受けていたB&G。
しかしバッドフォースと言う強大なユニットが解散してしまった現状、正規軍との真正面対決となったそれは、世代闘争としてクローズアップされてしまう。
現状で見る限り大阪プロレスのベテランと若手の差はまだまだ埋まっていない。B&Gは正規軍の「勝って当たり前」といった雰囲気を覆せていない実情がある。
ここに小峠が入ることでその勢力図に大きな変化が起こるのだろうか。
もしかしたらそれは逆に競争を阻害するものなのかもしれない。
B&Gは大阪プロレスを活性化の効果はあってもトップのユニットに辿りつくまでの道のりはまだ険しい。それにユニット同士で雌雄を決したところで世代を超えてゆく道は、最終的に選手一人ひとりの課題になるのだ。そう考えるとB&Gに若手が集中してしまう片寄った勢力図は、そのまず競うべき同世代の若手同士による対立関係を極端に減らしてしまう。
原田とタダスケにしたところで、ゼウスと闘うという貴重な機会はなくなってしまったのだから。
もちろんデビューしたての新人達がやがてタッグ戦線にも絡んでくるだろう。最初は正規軍所属になるはずだ。だがタッグはルール上どうしても力不足の相手がターゲットとなってしまう。そしてそれは三原や瀬戸口に集中してしまうのだろう。なぜならそれほどに正規軍ベテラン勢と新人の差は開きすぎているのだから。
しかし上を超えて成長するべき若手が新人狙いに向かってしまう状況が作られることは少々ポイントがずれているのではないか。B&Gがベテラン勢を容易に超えられないのであれば、せめぎあう相手は小峠であり、タコヤキーダーやKUSHIADAであった方が断然盛り上がる。若手と若手のぶつかり合いからしか生まれない刺激だってあるのだ。
進化過程にある若手の中だけではどうしても生み出されないものがある。それはバッドフォースに加入し、ゼロを始めとしたルードたちの背中をそばで見て一回り進化した小峠が一番証明しているのだから。

小峠の過去の裏切りや遍歴は大阪プロレスの今を語る上ではもはや関係ないのかもしれない。次週に原田が小峠と組むというが、それで遺恨が晴れるのも悪くないだろう。
タッグフェスは近い。小峠が誰と組むかも興味深いが、そこで原田やタダスケと組んでも良いと思う。そしてそれは一時休戦といった意味合いでも問題ないのではないか。答えを急がず現状の波乱を含んだ関係そのままにトーナメントを闘って、そこから今後の関係をはかるというのも面白い解決法だろう。
正規軍入りしてユニット内で我が物顔に振る舞いベテラン達の手を焼かせながら、B&Gとの全面対決を決め込むという自己中心的なポジションも、今の小峠にとっては魅力的な立ち位置に思えるのだが。

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こうやって新人そして若手が絶え間なく成長し、下から突き上げていく力というのが団体の未来を切り開いていく。
若さを武器に常に目標を作りながら登っていけばいい。すぐ下の新人達をバックアップしていくことも新たな経験となるだろう。タイプの違うたくさんの先輩達を見ながら三原や瀬戸口が自分達の方向性をどう定めていくのかも楽しみだ。
団体が流れをつくるだけでなく、選手の変化が流れをつくり団体を形づくってゆく。

目に見える改革だけに注目してしまうのは間違いだった。
新人は可能性に向かって一歩を踏み出す。B&Gが若手がただ勢いを武器に前を目指す。ベテラン達は知らずそんな彼らに刺激を受けて奮起する。
彼ら大阪プロレスの選手たちの改革はそれぞれの意識の中で確実に進行しているのだ。
自らの変化が経験を生み、そして創造へとつながる。

posted by ラポン at 21:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 大阪プロレス観戦記2008 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごく、これからの大阪プロレスについて考えさせられました。
本当に凄いよ!ラポンさん!こんな濃い記事を読ませて戴ける幸せを感じてます。今日は圧倒されてまともにコメント書けません。
大阪プロレス、本当にいい団体です。
Posted by さぬきうどん at 2008年05月27日 20:40
>さぬきうどんさん

正直、なんか改革っていう言葉からプロレス的な他団体参戦とかばっかりを安易に想像してしまった自分が今は少し恥ずかしいんですよ。

大阪プロレスの選手は持っている力を最大限に使って、自分達で団体を変えて行こうとしてるって思います。
まず自分らファンが期待し応援しなければいけないのはソコなんですよね。もっと選手の可能性信じてあげないとダメでした。

新人の経験が団体の創造につながる。考えてみたら当たり前ですよね。
だから新人の試合は撮影よりじっくりと一挙手一投足を見守る方がいいって気付きました。これからどう育っていくか楽しみですもんね。
Posted by ラポン at 2008年05月28日 02:42
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