2008年05月30日

入江に刮目せよ

5月25日の日曜日、愛知県名古屋市の中村スポーツセンターには多くのプロレスファンが訪れていた。

なぜなら昼間には大日本プロレスとプロレスリング・エルドラドの合同興行「プロレス大感謝祭」、続いて夜の部がDDTプロレスリングの興行「でらDDT」ということで同じ場所で計3団体の顔ぶれが集う非常に魅力的な一日となっていたからだ。
そのビッグマッチと言うよりプロレスの博覧会といった雰囲気は名古屋を中心としたプロレス好きたちの足を向かわせたるのに充分だったといえるだろう。見た限り二つの興行をハシゴしたファンはかなりの数に上ったと思われる。

近年、名古屋を中心とした東海地区のプロレスは、関東や関西とは風味の違う成長を遂げていると言える。
以前より「東海プロレス」や「DEP」を始めとする地元インディー団体が手を組んだ興行が数多く開催され、加えて「愛プロレス博」や「愛プロレスパーク」「お花見プロレス」などのインディーの枠に捕われない冒険的イベントが毎回好評を博している。
そこには純粋に「プロレス」という文化を楽しむための豊かな土壌ができあがりつつあるのだろう。

そして満を持して来月7日にはZepp Nagoyaにおいて「でら名古屋プロレス」が旗揚げされる。名古屋プロレス熱が爆発するのに、ついに機は熟したと言えるのだ。

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すでに知っている方もおられるかとは思うが「でら名古屋プロレス」はDDTの高木三四郎社長が手掛ける新しいプロレス団体である。とはいっても「ユニオン」や「マッスル」のようにDDTの姉妹組織的な位置付けではなく、あくまでも独立資本で地元密着を目指した団体。この地元密着という部分のこだわりが「でら名古屋プロレス」のキーでもあるのだ。
その選手の所属採用は現場監督である高木三四郎、コーチである高井憲吾が地元中心の生え抜き選手を育成デビューさせる事によって初めて実現するもの。
よって、すでに名古屋では名の知られているSHIGERU選手はいるものの最初にスター選手ありきといったスタートではないのだ。
長いプロレスの歴史で、数多くある団体のほとんどが分裂や離脱から派生してきた中でこの設立パターンは稀なのではないか。
当然ながら知名度はほぼゼロからのスタートである。
だから「でら名古屋プロレス」はその地元密着のコンセプトをを活かして「地域対抗戦」の基本姿勢をとった。あえて他県の団体と闘うことで地元意識を煽り、観るものに愛着を植え付ける試みに出たのだ。

「名古屋vs千葉」、これが旗揚げ戦のテーマ。

彼らが闘うのは千葉の雄「K−DOJO」。
TAKAみちのくを筆頭に真霜や円華などの未来のプロレスを担う有力選手を抱えるこの団体は、当日デビューやデビュー間もない新人ばかりの「でら名古屋プロレス」には正直過ぎた相手だ。
そこには実力うんぬんを語る以前の、大きな格の違いが待ち構えているのだ。
しかし対抗戦は集客の効果もある。K−DOJOの知名度で客は入るのだ。しかし試合のクォリティは「でら名古屋プロレス」の新人たちの頑張り一つにかかっている。格が違うからといって相手に情けをかけられてしまっては観る者に何も伝わらない。地域対抗戦が各団体一度きりでなら次の相手はもちろんK−DOJO以外となる。これからずっと相手の団体の人気に観客動員のリスクを背負わせるワケにはいかないのだ。
次がどこの団体になるにしろ「でら名古屋プロレス」は旗揚げの試合で次への可能性を見せ付け自分達に注目させる必要があるといえよう。

この日の夜の部であるDDTのカードにそんな彼らの最終試験的な試合が組まれていた。
知名度の欲しい彼らにしてみれば、人気団体でのマッチメイクはこれ以上ない宣伝と言える。
しかし逆に言えばこの試合は観る者にとって、来たるべき旗揚げ戦の大きな舞台でいきなり外敵を迎える彼らの可能性を計る重要な試金石と言える闘いとなるのだ。

この日試合は6人タッグ。闘いに臨むのはまず高井憲吾選手。ハイテンションで力強いファイトが持ち味だ。大阪プロレスやガロガ騎士など数々の参戦経験を経て今は「でら名古屋プロレス」の選手兼コーチとしつ正規入団している。
入江茂弘選手は先月東京の新木場で、年末のプロレスサミット参加の選考を兼ねた若手だけの無料興行「若武者」で異例のデビューを果たした。その洗練されていないが気迫に溢れるファイトは歓声を呼び、主催のTAKAみちのくから絶賛を受けたという。
笠木峻選手は今月始め、愛知県春日井市で行われた「愛プロレスパーク」でデビューしたばかり。ハウジングパークという一般客が多く、やりにくいだろうシチュエーションの中での試合だったが、その肝の座った闘いぶりは新人離れしたものを感じさせた。新人の二人は名古屋では初試合。新人の残り2選手は旗揚げ当日デビューなのだ。

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まず始まった「プロレス大感謝祭」は、今月始めから激闘が続いていたタッグトーナメントの準決勝と決勝を中心として両団体の名だたるトップ達が一堂に会した。

関本・シャドウWX・佐々木貴・の大日本プロレス勢を始め、エルドラドのバラモン兄弟・KAGETORA・近藤修一といったメンバーがトーナメント限定の越境夢タッグでぶつかる様は、激闘が更なる激闘を呼び、観るものの頭をプロレス一色にした。
このトーナメントにスペシャルタッグマッチやダークマッチを含めると8試合で総勢28人が一度に見られるという豪華さには脇見する暇もないほどであった。

続くDDTは緩さと激しさの融合で現代プロレスを満喫させてくれる。試合ごとに異なる趣向で見せる闘いを、映像スキットを使ってすんなりと入り込ませる手法は先駆者たるDDTの得意とするところだ。

大感謝祭の興奮からDDT適度に揉みほぐされて活性化した頭は「でら名古屋プロレス」を迎えるのに充分。
第4試合で彼らを迎え撃つDDTは柿本大地にポイズン澤田JULIEそして高木三四郎。
まさに遠慮のない組み合わせ。容易に試し斬りなどさせてくれそうにない。健闘に期待しながらも試合として成立するかという不安がよぎった。

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結果から言えば新人の二人は相手の厳しい当たりに記憶を飛ばされた上に、最後は笠木に高木のテキサスクローバホールドがガッチリ決まってギブアップで敗れる結果となった。
それでは試合は盛り上がらなかったかというと、それは否だ。

入江は柿本と一歩も退かないエルボー合戦を繰り広げ、笠木選手の多彩な蹴りは着実にヒットし観客を沸かせた。
高井選手はポイズンの蛇界に付き合いながらもコーナーへのど迫力スピアーなどの充実したファイトでリングを駆け回った。そんな高井選手を見て新人も燃える。笠木のたたずまいはやはり新人離れしている。キチンとコーナーへのハイキックやニーなどで見せ場を作る。終盤、高木に痛烈なパワーボムを食らっても負けずに蹴りを放っていったのだ。
一方の入江はとにかく受ける。
見せ場こそ少なかったもののプロレス経験の浅さをカバーするど根性ファイトだ。
柿本の一撃で動きが止まる。かろうじて一発返せば倍の力で返ってくる。痛みで遠ざかる意識が痛みで引き戻される。
汗が大量に流れしたたり落ちる。手足がされるがままに捻られ絞られる。それでも歯を食いしばる。
芽生えてきたプロレスラーとしての本能が彼をつき動かす。上を、前を向かせる。そして体当たりのような逆転スピアー。
一連の表情豊かな感情が「プロレスラー入江茂弘」をリアルにリング上で表現させるのだ。
這いつくばっても立ち上がろうとする彼のがむしゃらさにたちまち声援が飛ぶ。
それは彼の力だけではなくポイズン、柿本そして高木が放った彼に対してのエールともいえる集中砲火が呼び込んだ声援なのだだ。

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試合後、入江は悔しさにマットを叩いた。何度も何度も。冷静に見えた笠木の顔も悔しさに歪む。
自己表現できるような余裕などなかっただろう。
それほどに激しいプロの洗礼そして衝撃。
でも、もっとできたはず。
もっとできなければいけなかったはず。
結果そして内容。表情に浮かぶのは、そのどちらも納得には程遠いという現実。
観ている側は「よく頑張った」と思う。
しかし彼らに満足はなかったのだろう。

高木から入江に来月の新宿FACE大会への参戦の命が下った。
彼らを支えていくのは一つでも多くの実戦。
高木三四郎は言った。
「オマエ達は恵まれている。何も無いところから始めたのがDDT」だと。
DDTは旗揚げから10年。それを支えたのは彼の想像を超える強いハート。これから彼らが見習い育むべき熱きハート。

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試合直後の休憩時間、「でら名古屋プロレス」のチケットブースには観客が集まっていた。それは粗削りだが「響く」ファイトが彼らにあったから。

数日後の週刊プロレス。DDTの記事は入江の感情溢れる表情が掲載された。新人らしからぬ扱い。プロレスを長年見てきた記者の目に留まった快挙。
もちろん「でら名古屋プロレス」は入江選手だけではない。プロレスという大海原に漕ぎ出す彼らの一人一人が苦しみ悩みながらも同じ方角を目指して進むはずだ。しかもまだそれは始まったばかり。そこには栄光のドラマもあれば挫折のドラマもあるだろう。それでも彼らには導いてくれる監督がコーチがいる。暖かく見守ってくれるファン達がいる。

それはまるでTVドラマの「スクールウォーズ」のようだ。熱血コーチ率いるチームが無名ラグビー部を花園出場そして全国優勝を成し遂げるまでのサクセスストーリー。
共感を呼んだのはコーチと選手全員が不良高校としての現実に向き合いながら本気と本気のぶつかり合いで成長していくところ。「スクールウォーズ」のようにゼロから真正面でプロレスという世界に挑み、逆境を乗り越えてゆく彼らの成長と感動が、あらゆる観る者を惹きつけた時、「でら名古屋プロレス」は今までにない感動を呼び起こす奇跡のプロレス団体となるのではないか。

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リニューアル作業で1日ブログ書けなかったです。
とは言ってもバナーまだ変えただけですが。それにしてもずいぶん野暮ったくなってしまいました(泣)

そして今回から(大阪プロレス&でら名古屋なインディー編)ということで大阪プロレスに加えて名古屋のインディー、特にでら名古屋プロレスの情報も増やしていこうと思います(今までもやってましたが)。

大阪プロレスも気分で情報とか載せてたのを、自分の確認の意味も含めてキチンとやっていこうと思います。カテゴリもチャンと分けて。イラストとかもヒマつぶしに書くかも...って色々目標先行な感じのリニューアル予定です。

まあ大阪プロレスが一等なのは変わらないんですが、地元にも頑張ってもらわなきゃってコトで。
posted by ラポン at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | でら名古屋なインディー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
0からのスタート、地域密着、他県対抗戦、「でら名古屋プロレス」魅力たっぷりですね!
ファンと一緒に成長していく団体なんて応援しがいアリアリで羨ましい。
残念ながら私の地元には地域に根付いたプロレス団体ありません。それが普通かもですが、しかし地元にプロレス団体あったら嬉しいですよね。生まれ故郷の九州には「九州プロレス」が発足しているのが救いです。昔のアメリカマットのように各地域にチャンピオンが居たら凄いだろうなとか考えたりもします。それには基本がしっかり出来て一般人と確実にレベルが違うというのが最低条件ですがね。
でも、なんとか日帰り可能な距離に大阪プロレスあるってのは幸せだと感じています。
Posted by さぬきうどん at 2008年05月31日 13:40
>さぬきうどんさん

自分もこのブログを始めた当初は大阪プロレスのある大阪が羨ましいって何回も書きました。

やはり地元にも誇れるプロレス団体が欲しかったですね。
Jリーグのように地域ごとに団体があると「でら名古屋プロレス」みたいやり方は一般的になっていくんですけどね。
実力が伴わずに団体数が増えるのは反対ですが。

面白いのは高井コーチは大阪プロレス所属経験者で入江くんもプロレス教室出身なんです。入江くんは大阪プロレスの若手とも仲が良いらしくって。
だから余計に愛着沸いちゃいますね。
入江くんには大阪に噂が届くくらい頑張って欲しいって思います。それが大阪プロレスの若手の奮起に繋がるかもしれませんから。

そしていつかリング上で...。
Posted by ラポン at 2008年05月31日 15:10
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